インターンシップ事例(1)
UCSD Rady School of Managementの在校生/卒業生による、Radyやサンディエゴにまつわるざっくばらんとした対談をご紹介します。
「MBA生の就職活動ってどうなんですか?−私費留学生たちの語らい 」
対談参加者:Yohei(Class of 2013)、Koji(Class of 2014)、Carlos(Class of 2014)
編集部:今日は私費留学生の方々にお集まりいただき、サマーインターンと卒業後のジョブに向けた就職活動についてお話いただこうと思っています。よろしくお願いします。
留学時の思いとサマーインターン
編集部: まず、MBAに留学された時の思いと、1年目の終りのサマーインターンまでのプロセスに関して、聞かせてください。
Yohei: 僕の専門は、IT系企業のデータアナリストなんですが、渡米後はもともとアメリカの企業で何かやりたいってのがあって、MBA卒業後も日米両にらみで就職先を考えたいなと思っていたんですね。子持ちなんで、最後は家族と相談なんだけど。ということで、サマーインターンについては、卒業後のフルタイムジョブにつながるストーリーを考えながら、自分のやりたい仕事に絞って活動しました。応募したのは15社くらいで、そのうちサンディエゴのIT系スタートアップ2社で夏の間働き、内1社はその後の学期も継続しました。2社とも、Rady生としては初のインターン採用だったみたい。
編集部: すごいですね。日本人が米国企業に入るのっていろいろ壁があると聞きますが、アプライに際しては、どのような工夫をされたんですか?
Yohei: ビザの壁や言語の壁ですね。でも、自分のやってきたことをまず見てもらわないと始まらない。よほど名の知れた大企業にいたならタイトルで物語れることもあるかもしれませんが、スタートアップは経験重視ですからね。なので、まず、第一の関門であるレジュメは企業別の特徴も踏まえて、個別に徹底的に作りこみました。Radyのキャリアチームのアドバイスだけでなく、他校、たとえば、KelloggのResume Bookとかインターネットで見られるので、とても参考になりました。また、有名企業の求人に応募してみて、書類審査をパスするかの反応を見て修正する、なんてこともしていました。
編集部: まず書類選考で抜きんでる必要があるわけですね。その後に面接ですよね。
Yohei: 書類選考を経て面接に呼ばれたら、自分の実力をいかに相手にわかってもらうかに心を砕きました。僕の場合、データアナリストって営業とかと違って数字で語りにくいんですよね。だから、自分が過去に作った資料や仕事の復元版を作っておいて、面接で「こんな仕事してました」といってプリントアウトした資料を出して説明しちゃう。
編集部: 完全に営業のプレゼンですね。
Yohei: そう。日本の就活だったらあまりしないと思うけど、自分という商品を売り込む営業マン。それに、会社からタスクを課される場合もある。
編集部: コンサルのケース面接(編集註:ケースを事前またはその場で渡されて、自分なりのコンサルプランを実際に面接の場でプレゼンする面接形式)みたいな感じですか?
Yohei: その通り。僕の場合、Social Media、Gamification、名刺のデザインの3タスクを課されて1週間後の面接時に説明しろ、と。Social Mediaとかは過去に経験もあったんで、次の面接時に、ロジックの説明と5万件のデータをどさっと渡して、見てもらったりしましたね。その手法は以後ずっとその会社で使われることになったんで、実際、有用だったんだと思っています。
一同: おー(歓声)。
編集部: Kojiも2社インターンが決まったんですよね。おめでとうございます。どのようなプロセスでしたか?
Koji: 僕の場合は、もともとアメリカで働きたかったのと、小さい企業、特にスタートアップで働きたいってのが出発点でした。Radyはスタートアップに強いですしね。応募時は、レジュメもそうだけど、僕はカバーレター(編集註:1ページ程度で略歴や志望理由等をまとめた書類。アメリカでは応募時にレジュメに添付する形で出すことがある。)により注力しました。
編集部: 具体的には?
Koji: レジュメやカバーレターでは、事前準備や戦略的な資料構成に時間をかけました。ここって日本人の得意なところだと思うんですが、意外にアメリカ人や他の国の人は手を抜きがちなんですよね。なので、毎日時間を決めて徹底的に企業を調査して、そのリサーチ結果と自分なりにできる貢献の仕方を具体的にカバーレターに盛り込むことをしていました。
編集部: 他には?
Koji: 僕は、前職が私企業ではなかったから専門性のハンデがあって、さらに語学のハンデ、あと日本とアメリカの違いに苦しんだという感じ。
編集部: 日本とアメリカの違いって?
Koji: 詳しくは過去のMBA留学生が書いたブログ記事(編集註: My Life After MIT Sloan 「MBA生が夏のインターンを獲得するには」、在校生によるKelloggライフBlog 「MBAアメリカ就活マニュアル」)を参考にしてほしいんだけど、一つはMBA生やアメリカ人との競合が半端じゃない。加えて、日本は人間性やポテンシャル重視だけど、アメリカは労働市場の流動性や慣習の違いもあって、スキルや実践的な力を問うんですよね。スキル:フィット=8:2ぐらいからはじまって、面接をへて最後はスキル:フィット=2:8くらいになるイメージ。カバーレターはその辺りの補足にも使いました。
編集部: Yoheiさんの話で出た、実績の証明に加えて、差別化と即戦力も必要だということですね。厳しいなあ・・・
Koji: うん、すごく厳しい(笑)。実際300社に応募したからね(にっこり)。
一同: 300社!!!(驚愕)
Koji: 当初は日本というアドバンテージを使わずにどこまで勝負できるかを考えていたから、純粋なアメリカ企業ばかりとりあえずぶつかっていった感じ。だけど、反応が良くなかったんで、途中で戦略を変更して自分のバックグラウンドである日本のビジネスに関連するところも視野に入れるようにしたら少し良くなった(笑)。ちなみに、スタートアップって、学校のキャリアサイトはおろか、表向き募集をかけていないところもあるんですよね。実際、インターンが決まったのもそういう会社ですし。
編集部: というと、ではどうやってコンタクトできたんですか?
Koji: 個別の会社のホームページにある代表アドレス、LinkedIn等のツールから行くのが一つ。あと、スタートアップなんで、ベンチャーキャピタル(VC)経由で人脈をたどることもしました。PwCのMoney Tree Report を見ればVCからスタートアップへのお金の流れがわかるので、そこで拡張期、成熟期にあるスタートアップ(=海外展開が視野に入ってくる)で日本マーケットで勝負できそうなスタートアップを探してから、投資元のVCにコンタクトして、どこどこのスタートアップの人を紹介してくれ、と。この二つで2-3割は返事が来て、意外にうまくいくものですよ。
編集部:!!!(さらに驚愕)アメリカは想像以上にネットワーク社会、コネ社会といいますが、まさにその文脈通りのネットワーキングをされたんですね。
Koji: そう。そこで、「御社でなら自分の経歴を活かして具体的にこんな仕事ができます」と積極的に説得していくんです。その過程でもネットワーキングが生きてくる。たとえば、合格した1社は、Rady Team Japanの先輩がサマーインターンをされた会社だったので、当然その先輩との個人的なつながりも話す。あるいは別の会社では、面談者がMBA開始以前にやったインターン(編集註:KojiはMBAコースが開始される前にサンディエゴ企業で無給でインターンした経験あり。)先の上司と知り合いだったので、僕の面接前にその元上司に連絡を取って僕の働きぶりを確認していた、ということもありました。やはり、ネットワーキングで知っている人が多い方が有利だと思います。
編集部: ネットワーキングはインターンの門戸を開くだけでなく、実力の裏付けとしても使われるんですね。さてCarlosのインターン探しはどうでしたか?
Carlos: 僕は私企業というより大学経営やノンプロフィットに関心があったから、先のお二人とはだいぶ違うんですよね。この1年、MBAの授業以外に、スペイン語の勉強や南米旅行、メキシコの孤児院でのボランティア等をしてNPOや教育に関心が出てきたので、最終的に社会起業家支援のNPOのエジプト支社でサマーインターンをする予定です。
編集部: これはこれですごいですよね。就職活動は私企業向けとは違うんでしょうか?
Carlos: レジュメやカバーレターを作りこんだのは一緒です。ただ、NPOは無給のインターンが多いので、一般企業よりは比較的面接には呼ばれやすいと思います。加えて、僕の場合、経歴が多様なので、その点でも目を引きやすかったとはいえると思います。
編集部: 面接ではどうでしたか?
Carlos: 面接対策は相当やりこみました。Kojiの言っていた事前リサーチに加えて、自分のアピールポイントを織り込んだ想定問答などを用意していました。少なくとも面接前には丸2日は費やして準備をするようにしていました。あと、ネットワーキングという点では、MBAのキャリアイベントで出会った人や自分の友人から範囲を広げていきました。実際、Kojiの紹介で、有名なアメリカの教育系NPOのDirectorと話をさせてもらったこともあります。
編集部: 1年生の2人はこれからですが、Yoheiさんは実際インターンを経験されて苦労されたことや予想外だったことなどありますか?
Yohei: スタートアップなのでなんでもかんでもゼロから作り上げなくてはならなかったし自分の責任範囲を乗り越えて仕事を任されたところは予想以上でしたね。
編集部: コミュニケーションの問題もありました?
Yohei: いやぁ、きつかった(笑)。 僕が働いていたところは、職場の同僚はみなネイティブだったし、ネイティブとの会話もMBAの講義ともグループミーティングとも全く違って、とにかく議論のスピードが速い。ビジネスの内容バックグラウンドもあったので理解できたけど、最初はついていくのが大変でしたね。スタートアップはチームの1人1人が個人で強くて、その上でチームプレイという感じなので仕事はきつかったけど、その分やりがいはめちゃくちゃありました。個人的にはインターンの経験は、MBAの授業全部と同じくらい価値のあるものでしたね。
タイムライン、学内のイベント、学外のイベント
編集部: 就職活動のタイムラインは?
Yohei: 業種によって全然違いますよね。金融とコンサルはすごく早い(編集註:金融とコンサルは秋学期期間中に採用が決まるというスケジュール。)ので、MBA開始後すぐにフルスロットルで就職活動を開始しないといけない。且つサマーインターンがフルタイム採用のための事前確認だったりすることもある。
Koji: 大企業も早いですよね。CiscoやSonyのようにオンキャンパスで採用をやるとこともあるし、専用ホームページで登録が必要だったりもする。ちなみに企業によっては、特定のビジネススクールからしか採用しないと決まっているところもある。一方で、スタートアップ等の中小企業は冬や春学期で決まっていく。事前によく調査する必要がありますよね。
編集部: RadyやUCSDのキャリアイベントってありますよね?
Carlos: Radyだとキャリア主催の企業フェアや1月のベイエリアトリップ(編集註:学校主催のサンフランシスコ・シリコンバレーの企業見学)、企業の講演会とかが良い接点になるかと思います。あと、UCSD主催の学部生向け主体のものとか、サンディエゴの他の大学でやったりしているローカルな企業フェア等も活用しました。
編集部: ボストンキャリアフェア(BCF)はどうなんでしょうか?
Yohei: 11月にボストンで開かれる、巨大な日本人就活生向けのフェアですね。実は2年とも参加したんですが、1年目はインターンも募集していると思っていったら実際はフルタイムばかりだった(笑)。中にはあるらしいんですが、出会わなかったなあ。で、会場は200~300社がひしめき合っていて、全体の約4割が日系企業の米国支社、4割が米国企業日本支社、2割が日本企業日本支社。2/3がブース、1/3が面接会場なので、その場でレジュメを見て、よければ面接して、その場で採用が決まる仕組みです。日本ないし日系企業で働く人のためのきわめて効率的な採用の場ですよね。
フルタイムジョブ
編集部: フルタイムの就職活動についても少しお聞きしてもいいでしょうか?
Yohei: 先ほど言ったように、夏休み以降の学期もインターンを継続しつつ、日米両方の企業を対象に就職活動をしました。11月くらいから動いた感じですが、僕の志望するIT系だと少し早いなと感じて、結局本格化したのは冬学期からです。アメリカ企業は、サマーインターンの時と同様で、書類を応募して、面接を受けていく感じですね。
編集部: 日本企業については、エージェントを使われたのでしょうか?
Yohei: LinkedinやBizReachという就職用ネットワーキングサイトに登録していたら、ヘッドハンターから連絡が来たので、実際にメールやSkype等での面談をさせてもらってこちらの要望と先方の持っている情報をすり合わせて、条件にあう会社をピックアップする作業を2月くらいから本格化しました。
編集部: 日本企業のMBA採用枠ってあるんですか?
Yohei: 外資系はMBA枠があるので、春先に面接して、卒業後の夏から働く契約を保証してくれたりします。一方、日系企業はほとんどそういう枠がないので、卒業直前にならないと決まらないケースもあると思います。また、MBAを持っているからといって、必ずしも給料が上がるわけではないという事実はきちんと認識しておいた方が良いと思います。したがって、日米どちらで働くにせよ、企業の提示する条件と自分自身の条件を明確にして活動するべきだと思います。たとえば、僕の場合、ヘッドハンターには「自分の成長できる企業、チャレンジできる仕事、給料」の3つが判断基準だと明確に言ってあって、僕の条件に合わないものは見向きもしませんでした。
編集部: サマーインターンもそうですが、授業とのバランスを取りながら進めるのも難しいですよね。
Yohei: 日系企業の場合、時差もあってSkypeの面接が深夜だったり、帰国しての面接が必要だったりもするので、時間管理・体調管理は必須ですよね。就職は生活に直結するので、確かに重要課題なんですけど、でも、一方でサンディエゴで仲間や家族と過ごすMBAライフも一生に一度しかないわけで、やはりそのバランスをとることが重要じゃないかな、と思います。
最後に
編集部: さて、最後に、今後入ってくる私費留学生に向けて、エールというかメッセージをいただけますか?
Yohei: 周りや競合を意識しない、ということですね。自分のスケジュールと戦略をもって実行する。自分なりのゴールと芯をはっきりと持って、そこに向けて2年間を過ごすことが重要だと思います。
Koji: 範囲を徹底的に限定しろ、ということでしょうか(笑)。就職活動は大変ですが、マーケットを細分化してニッチに特化することで、その業務をできるのが自分しかいないオンリーワンマーケットが見つかるはずです。
Carlos: 僕は逆に、自分を限定しない、ということを言いたいと思います。例えば、就職希望の国や地域にこだわらないで探してみる、そうすれば、競合が少ない分野を見つけることができる、というのを考えてみることが重要だと思います。
編集部: 皆さんの実体験に基づいた深い言葉ですね(笑)。2年間という限られた時間の中で、学業もプライベートも就職活動も何でもやらなければならないわけですが、今日のお話から、必ず道はあるということもわかりました。サマーインターン、フルタイムジョブ、ともに充実したものになることをお祈りしております。本日はありがとうございました。
編集記:class of 2011のY.Yさんがこちらで当時の就職活動の記録を詳細に綴られていますので合わせてご覧ください。