各コース概説
※本稿は情報が古いため、2022年版に更新予定です。
申し訳ありませんが、授業については公式サイトのシラバスか、在校生とのコーヒーチャットなどで適宜情報収集ください。
汎用基礎スキル
専門分野
戦略論
【必修】Strategy
経済学の「ゲーム理論」をベースに戦略論を学習するというユニークな科目です。戦略検討の際には、常にステークホルダーの出方を予測しながら、Win-Win Situationに致る戦略を採るべし、という主旨です。各プレーヤーがどのような戦略選択肢を持ち、それぞれの選択肢から帰結される結果がいかなる効用を持つか、といった観点で分析を進め、ゲーム理論における「均衡状態(≒ Win-Win)」に達するための最適な戦略を提案するといった演習を数多くこなします。授業で取り扱う事例はビジネスだけではありません。寡占ビジネスはもちろんのこと、軍事、スポーツ、オークションなどの幅広い事例に触れながらゲーム理論を楽しく学ぶことができます。とかく相手よりも自分サイドの状況分析や戦略オプションの検討に重点が置かれがちですが、自分サイドと同等、あるいはそれ以上に、相手サイドの状況を理解・分析しないことには、双方にとって妥結可能な施策が得にくいということを、ゲーム理論というストラクチャーをベースに再認識させてくれるコースです。当然、マイケル・ポーターの5 Forceなど戦略論の基礎概念もカバーします。
【選択】Technology and Innovation Strategy
ハイテク業界でのマネジメント職、またはハイテク業界への投資やコンサルティングを志向する学生に向けた講座です。破壊的技術(ディスク・ドライブ)、標準化競争(Betamax 対VHS)、オープン・イノベーション(P&G)等のハイテク業界固有トピックに加え、リアルオプション等の分析手法も学びます。ケース・スタディの題材もApple, Google, Kodak, Amazon等と多岐に渡り、ハイテク以外の業界にも応用可能な経営知見を網羅しています。2011年は、Qualcommの創業者であるDr. Irwin M. Jacobsがゲスト・スピーカーとして来校し、通信業界における標準化競争事例を当事者から学ぶ贅沢な時間を過ごすことができました。
【選択】Scenario Planning
一つのテーマ(電気自動車・宇宙開発等)を絞ってどのように戦略を練って、中長期的に利益を上げていくかビジネスモデルを考えていくという授業です。L2Mで大体のメカニズムを学ぶので、その復習には良い授業でした。
事業開発
【選択】New Product Development
商品作りの着眼点とその設計、およびプロセスを学ぶ講座です。授業は隔週土曜日に1回5時間かけて行われますが5時間を長いと感じることはありません。講師はハーバード・ビジネススクール卒、超一流デザイン・ファーム(IDEO)出身で、授業の合間に自らのビジネス経験をユーモアたっぷりに惜しみなく披露してくれます。カリフォルニアの青空の下で工作をしたり、各自が写真を持ち寄って日常生活を紹介しあうことで商品作りの視野を拡大し、クラスメートと商品プロトタイプ(試作品)を作成しながらその実践的なプロセスを学びます。また、ソニーのAIBOを題材としたケース・スタディのほか、“日本のモノ作り、および日本人の価値観やメンタリティ”に関する議論が頻繁になされますので、プレゼンスを発揮するチャンスが沢山あります。
【選択】Topics in Innovation: Technology Commercialization
サンディエゴにあるベンチャー・インキュベーション組織のサポートを得て、テクノロジー系ベンチャー企業の評価とコンサルティング・プロジェクトに取り組みます。学期前半は、講義形式でベンチャー企業評価の概論を学んだ後、地元ベンチャー企業を毎週5社ずつ評価します。A4数枚にまとめられた資料をもとに、各社を4つの評価軸(Market, Technology/Product/Service, Organization, Financials)に沿って定量評価します。その後、学生の評価スコアとインキュベーション組織の専門家による評価スコアを照合しながらベンチャー評価の実践的な着眼点を学びます。学期後半からは3名で一つのチームを作り、地元ベンチャー企業の支援プロジェクトに取り組みます。私のクライアントは病院の手術室オペレーションを改善するソフトウェアの開発を目指す企業で、サービス開発方法の経済性評価とマーケティングプランの提案を行いました。
マーケティング
【必修】Marketing
基礎概念と主要ツール群を学ぶ講座です。顧客ニーズに関する考察、およびニーズ発見のための思考フレームワークの学習から始まり、環境分析(3C分析)、マーケティングミックス(4P)等、主要な分析フレームワークを学びます。講義はケーススタディが中心で、学習した知識を実際のケースに応用することに主眼が置かれます。3C、4Pなどの基礎的な概念をある程度理解している人でも、それらを再度体系的に知識整理できるのは有益です。プロモーション分析(ブランディング、広告等)や、マーケットリサーチ手法(コンジョイント分析等)なども学びます。ケーススタディでは、薬品産業、飲食産業、アウトドア産業、通信産業、ゲーム産業など様々な産業分野に触れる機会を得ます。マーケティング経験や知識のある人でも、それまで意識してこなかった新しい分析観点や、それぞれの業界特性などを垣間見ることができ、検討の視点や幅を広げられるという意味で大変有意義です。
【選択】Research for Marketing Decisions
意思決定に対して真に有用なリサーチ結果を得るために必要なプロセスやフレームワーク、及び、様々な具体的手法を学習する講座です。リサーチを行うに当たっての費用対効果分析に始まり、フォーカスグループを用いた動向調査方法、サーベイを活用した様々な分析手法を学びます。サーベイでは、質問設計に関するノウハウや、郵送・電話・インターネットなど様々なサーベイチャネルとその利害得失等を学びました。さらに、サーベイ結果から用いた様々な数理的分析手法を学びました。例えば、回帰分析を用いて予測モデルを構築する方法、Factor Analysisという手法を用いて分析的にポジショニングマップを生成する方法、クラスター分析を用いて顧客をセグメンテーションする手法などです。また、製品やサービスが持つ様々な属性の優先度付けをする手法であるコンジョイント分析も学習します。直観的、または、主観的になりがちな、ポジショニングやセグメンテーションといった作業について、科学的なフレームワークを学ぶことは非常に有益です。
【選択】Social Media Marketing
ここ、一、二年で急速に利用が増加している、Facebook、Twitterといったソーシャルメディアをいかにマーケティングに活用するかについて学習するコースです。ベーシックコンセプト・Facebook,Youtube, Twitterの活用方法、そしてそれを使った企業の良いマーケティング手法(良い例・悪い例)を学習します。授業も授業中の発言だけでなく、BlogのPostでいかに多くかつ良い発言をしたのかで出席をCountするというものでした。Social Media Marketingの良い点そして改善点を学習できるのは大きかったです。
※2011年秋以降、担当者が移籍するそうなので、開講されるかは未定です。
【選択】Consumer Behavior
行動心理学の観点を交えながら、ビジネスと顧客行動との関連性について理解を深めます。顧客ニーズを理解するための効果的なインタビュー技法、顧客の購買決定プロセスの理解、記憶とブランディングとの関連性、コミュニティなどに代表される社会的影響、カルチャー依存性、などマーケティングに有用な概念を幅広く学習しました。顧客ニーズを探るには対話が欠かせないことは言うまでもありませんが、適切な情報を引き出すためには、様々な行動心理やプロセスの理解が重要であるとともに、適切な対話テクニックが必要であるということを再認識することができます。期末プロジェクトでは、任意のトピックを選択し、それを消費者行動の観点から分析を行いました。私達のグループは、Facebook Places を題材にとり、個人の位置情報を共有するというサービスを成功させるにあたっての問題点の分析と、それに基づくマーケティング提案を行いました。サービスそのもの認知、利用促進のためのグループの影響、プライバシーに関する心理、など学習したフレームワークが効果的に活用できることが理解できました。
【選択】Pricing
最適価格を決定するための様々な理論や分析手法を学習します。コストプライシングの問題点を認識したうえで、製品価値にフォーカスして価格設定を行うバリュープライシングの概念を学びます。製品価値を価格に転嫁する手法の1つとしてコンジョイント分析を応用します。さらに利益最大化の観点から、顧客セグメント毎に異なる価格を設定するPrice Customizationの概念や、バンドル販売に関わるプライシング概念なども合わせて学習します。定量分析手法として、過去のデータを用いた価格弾力性の回帰分析評価と最適価格の導出方法、その他にも、競合製品の価格影響力を分析するクロス分析、サプライチェーン内における価格変化の伝搬特性に関する分析なども取り扱います。価格分析を行うために必要なデータを取得しておくことはもちろんのこと、定期的に意図的に価格を変化させることで価格弾力性(応答性)に関わる情報を収集する必要があるという点が目から鱗でした。
【選択】Marketing Communications
広告、セールスプロモーション、PR(Public Relation)、ブランドマネージメントなどといった顧客や市場とのコミュニケーションに関する知識やノウハウを学習するコースです。目的定義、メッセージ戦略、チャネル戦略、独創性、効果測定などコミュニケーション戦略立案における様々な要素について、鍵となる概念やフレームワークを学習します。一般的なケーススタディ以外にも、雑誌広告および量販店でのセールスプロモーションのそれぞれに対して、最良・最悪のものを選択して分析するといったユニークな演習も行います。また、期末演習では、実際のクライアントからの要求(e.g., Online販売のwebサイト向上、睡眠障害の認知度向上など)に基づいてコミュニケーション戦略を立案しプレゼンテーションを行います。本コースで学習した内容は、マーケティングに限らず、日常的な意思伝達、プレゼンテーション、ネゴシエーション、要件討議など、あらゆる活動に応用が可能です。コミュニケーションの目的は何なのか?論理に訴えるのか、感情に訴えるのか?競合・類似物をどう活用するのか、差別化に使うのか、説明簡略化のための補足情報と見なすのか?そうした基礎概念を念頭におくことでより効果的なコミュニケーション技術を身につけることができます。
【選択】Marketing Strategy
必修科目や各選択科目で学んだマーケティングの基本コンセプトやツール類を実際に使いこなす総演習クラスです。企業におけるマーケティング活動を幅広く俯瞰しますが、特にセグメンテーション、顧客価値視点での差別化、ブランドマネージメントに比重を置いたケース・スタディが多いです。最終グループ課題は「Sustainability」、「Changing energy usage」、「Global hunger」等の抽象度の高いテーマを一つ選び、マーケティング戦略の策定を行います。課題が発表された直後は「漠然としたテーマ」に戸惑っていたのですが、出発点となる「課題の構造化」と「範囲設定」から始まり、粗いレベルでの仮説構築を繰り返しながらインパクトの大きい戦略を練り上げていく作業を通じて、マーケティング・マネージャーに必要なholistic viewを身につけることができるように設計されておりました。「考える範囲がある程度用意された課題」と異なって自由度が高い分、「行きつ戻りつ」の産みの苦しみが大きかったのですが、その反面、クラスメートとの広範な議論を楽しめるクラスでした。
経営/組織論
【必修】Organizational Strategy
組織メカニズムを「Motivation」、「Information」、「Coordination」という3つの主要切り口から体系化し、組織(グループ)パフォーマンスを最大化するためのノウハウを学習します。具体的には、Motivationを引き出すための様々な施策とそれぞれの利害得失の理解、情報共有の意義や情報収集・分析に伴うバイアスの危険性に対する理解、また、強力なグループ形成のために組織文化が果たす役割とその有用性、組織文化醸成のためのテクニックなどをレクチャー形式で学習します。感覚的にとらえられがちなループダイナミクスを知識体系化できます。ケーススタディの一例として、「3M(スリーエム)」を題材として扱います。3Mが巨大化する過程で「持ち前の自由闊達な企業家風土」を維持しながら、いかにオペレーション効率(投資効率、管理効率等)を高めるかといった非常に興味深いテーマをグループ討議し、組織変革の提案書を作成するという作業を行います。3Mのような巨大企業が自社課題を解決するため実行してきた具体的な組織的措置を討議・理解する過程で、巨大組織を対象とした組織改革プロセスを模擬体験できることは大変有意義です。コース最後には、スタディグループ・メンバーから、グループ作業に対するフィードバックを貰えます。グループ員としての貢献具合を客観的に指摘してもらうことができ、その後の自己改善に大変有効です。
【選択】Project Management
Operations ManagementとFinanceの基礎知識をベースにOrganizational Strategyの応用コースとして位置付けられています。個別プロジェクトに関しては、上記3つの主要切り口を基礎としながらスキルマッチの観点でチームメンバーとタスクの設計方法を学びます。プロジェクト工程をモジュール単位に分割したクリティカルパス分析では、どの作業モジュールがプロジェクト期間に影響を及ぼすのかを発見し、期間・コスト短縮のためのクラッキングを学びます。また、全社視点で複数プロジェクトへの投資判断を行うためのポートフォリオ理論、リアル・オプション等を利用したリスク管理をはじめ、複数事業者間契約管理等のプロジェクトを成功に導くためのスキルを幅広く学びます。ケーススタディでは英仏海峡トンネル(Eurotunnel)や火星探索等、読み物としても興味深い壮大なプロジェクトが取り扱われます。
【選択】CEO, the Board of Directors, & Corporate Governance
Enron事件に象徴されるアメリカの企業統治に関わる諸問題は様々な議論を巻き起こし、企業はSOX法に象徴される厳しいガバナンス・ガイドラインに従うことを要請されるに至りました。本講座では、株主との関係性を含めた企業ガバナンスの観点から、CEOや取締役会が果たすべき役割や責任について学びます。グループで分析対象とする企業を選択し、その企業のProxy Statement(株主総会招集通知)を様々なトピックで分析していきます。取締役会は独立的な立場を保持し得る構成となっているか、多様なスキルセットを保有した人員構成になっているか、CEOを含めマネージメントチームの報酬はいかにして決定され、その額は妥当か、こうした統治メカニズムの根拠となるガイドライン(SOX法、NYSEガイドライン etc.)との整合性はどうか、など様々な視点で分析を行う中で、学習内容を深めて行きます。普段あまり意識することのない企業上層部の状況を理解することは、会社という組織体を理解し、自分と会社との関係性をより深く考察する契機となります。また、ガバナンスの概念を深堀りする過程で、ビジネス倫理の重要性を体感的に認識できるようになりますし、情報公開のレベルや取締役会の独立性など日米の企業ガバナンスの違いを理解できるようになります。
【選択】Techniques in Equity Compensation
会社資本を活用した報酬制度について様々な手法やその意義や効果などについて学習する講座です。Stock Options, Stock Grants, Restricted Stock Units, Phantom Stocks, ESOP (Employee Stock Ownership Plan) など様々な手法について、従業員の帰属意識、モチベーション、あるいは、税制上の差異など、その効果を体系的に学習します。学習内容を活用し、期末プロジェクトとして、架空の企業を想定したうえで、所望の目的を達成するための報酬制度を設計するという演習を行いました。本講座は表面的には報酬制度に関する内容ですが、人々を目標に向かって動機付けるという点において、本質的には組織論に近い内容でもあります。組織力をいかに高めていくかという命題を、インセンティブの観点から深堀りするという非常に有益な機会を得ることができます。
【選択】 Current Business Law Issues
起業、および、その後の事業拡大といった一連のプロセスに沿って、関連する法律上のトピックを学習していきます。関連法律の個別各論を深堀するのではなく、どのような場面で、どのような法的考慮が必要となるのかといった概観的な法的思考能力を養う講座です。企業形態(LLC, Corporation, etc.)の選択、会社設立手続き、資金調達方法(Angel investors, Venture Capitals, etc.)、IP(intellectual property、特許、商標 etc.)の扱い、雇用環境、取引契約、M&Aなど企業活動における様々な場面で考慮すべき法体系を理解し、それに対して適切な対応を取るための勘所を学ぶことができます。
オペレーション
【必修】Operations Management
工場での生産工程や、コールセンターや各種窓口業務などのサービスなど、様々なオペレーションを定量的に分析する手法を学びます。分析対象となるオペレーションをブロックダイアグラムで一般化したうえで、需要(Input rate)、処理時間、在庫(Inventory)の3つのパラメータで該当オペレーションの特性を定量化し、ボトルネック分析やオペレーションフローの最適化などの検討を行います。その他、在庫管理の最適化手法(コスト最小化と供給レベルをバランスさせるための部材発注数の考え方)、品質管理手法(TPS、シックスシグマ等)、サプライチェーン内における需要伝播特性(上流工程に向けて需要情報が歪んで伝播する効果:Bullwhip effect)なども合わせて学習す。これらレクチャー形式の他、グループワークとして、ケーススタディ(工場生産フローの最適化分析)や、在庫管理シミュレーション(オンライン上でシミュレートされる製品需要に対して、部材購入/生産を通してグループ間で利益高の順位を競うゲーム)などの課題を行うことで習得知識の応用と定着を図ります。
【選択】Supply Chain Management
供給者市場のマクロ分析、購入資材のコスト構造の推定手法、TCO(Total Cost of Ownership)、サプライチェーン全体のコストダウンテクニックなどといった個別各論を通して、サプライチェーン全体の理解を深めながらコスト最適化のためのノウハウを学習する講座です。企業の財務情報、国税調査情報など様々なデータを用いることで、購入対象の物品(あるいはサービス)の適正価格を推定することが可能であり、その情報をもとにサプライヤとの価格交渉に臨むというのが一例です。あるいは、単純な初期導入コストや定常的な運用コストだけでなく、機会コストまでをも含めたTCOを考慮することで価格交渉や、その結果としての購入意思決定に大きな違いが生じるといった事例を、ケーススタディを通して学習します。また、コストダウン手法として、プロジェクトおけるクリティカル・コストを発見し改善するための効率的なプロセス論を学び、実際のグループ演習を通して実践します。普段あまり意識することのない「購買」という事業機能の潜在的な意義と重要性を理解することで、事業活動に対する見方を広げることができます。
ファイナンス
【必修】Finance
現在価値の概念、キャッシュフローをベースとした企業全体またはプロジェクト価値の算出、コスト構造(負債/資本比率等)、株式/債券とポートフォリオ概論、配当に関する理解、などコーポレートファイナンスに関わる基礎事項を広範にカバーする講座です。ケーススタディでは、「プロジェクト価値の算出」、「IPO時の初期株式価格の算出」、「コスト構造(負債/資本比率)の分析と最適化」など、実際のビジネスシーンで重要となる概念を分析します。競合分析や協業提携などに関連して他社財務状況を分析する機会がある場合には、こうした知識を活用することで対象企業の財務状況をより正確に把握し(表面的な財務数値だけでなくその裏に隠れている財務戦略やマネージメント意図などを理解するなど)、分析・検討の精度を高められます。またこれらの知識を基に社内の財務戦略や市場反応のメカニズム等の理解を深めることは、ラインレベルの組織戦略やポジショニングを検討するうえでも有効です。
【選択】Investments
株式、社債、国債、そして、それらから構成されるポートフォリオなどといった各種金融商品のリターン・リスク分析の手法を学ぶコースです。過去の価格情報から回帰分析手法をもとに将来価格を予測するモデルを得る方法を学習し、そうした価格予測モデルが、市場全体の価格動向に加え、企業規模、あるいは、企業に対する市場からの期待度などといったパラメーターにどのように関連しているのか理解できるようになります。また、所望のリスク・リターンを得るためのポートフォリオの構成手法などを学習します。その他、金融リスクをヘッジするためのテクニックや、ファンドマネージャーがどのような運用戦略を採っているかを自ら確認する手法(Style Analysis)なども合わせて学習します。レクチャー形式で基礎概念を学習するとともに、ケーススタディでは、ファンド・マネージャーの立場で投資判断を行うなど実践的な学習スタイルになっています。
【選択】New Venture Finance
ベンチャー企業へのエクイティ投資をベンチャー・キャピタル(VC)の観点から学習するコースで、卒業後にベンチャーキャピタル、またはITやライフサイエンス等のR&D分野で働きたい方を対象としています。他のファイナンス系科目との違いとしてこのコースを定義すると「新規に設立された企業が、創業後に事業を軌道に乗せて自立し、事業活動を通して資金を調達できるまでの期間に必要な資金を供給するための投資システム」を学ぶ講座といえます。VC業界の歴史、資金源、ファンドの仕組み、投資先企業の評価、Term Sheets(投資の諸条件がまとめられた書類)の読み方等をレクチャーで学んだ後、ケース・スタディやゲスト・スピーカーの講演を通じて、実務レベルでのHow toを演習します。投資ステージごとに取り決められた異なる条件下での投資リターンの計算と、優先株式、転換社債、新株引受権付社債(ワラント債)等の種類株式ごとの投資リターンの計算を通じて、ベンチャー企業への投資判断に必要とされる着眼点とプロセスを修得します。
【選択】Portfolio Theory in Practice
1990年に現代ポートフォリオ理論(MPT)でノーベル賞を受賞したハリーマーコビッツ教授の授業。授業ではPortfolio Theoryの歴史的な発展とご自身の研究の関連性、ポートフォリオ最適化に係る数理をご教示くださいます。課題のひとつに実際の顧客に対する投資助言レポート作成があります。かなり実践的な内容でWatson WyattやMercerなどのいわゆる運用コンサルの業務を疑似体験できます。またマーコビッツからの評価は金融機関出身の人間にとってもチャレンジングな内容となっております。
【選択】Merger and Acquisition (M&A)
M&Aに必要となる知識を包括的に学ぶコースです。M&Aの目的・意義、契約形態(subsidiary merger, reverse merger, etc.)、買収戦術(敵対買収, LBO, etc.)、買収防衛論、企業価値算出方法、資金調達戦略など、全体を俯瞰できる内容です。さらに、実際のM&A関連の統計データや、実サンプルなども数多く紹介され、基礎知識だけでなくM&A実取引の勘所を理解できるようになります。ケーススタディでは、鉄道会社、製薬会社で実際に行われた買収取引を分析します。シナジーの定量化や、財務情報から企業価値を算出するのはもちろん、マーケティング戦略から経営層や株主の信託義務に至るまで企業経営に必要な様々な知識を総動員して、最適な買収戦略について考察するという課題に取り組み、実践力を養います。
【選択】Advanced Corporate Finance
一年生で取得したFinanceの応用版です。一年で学んだFinanceの復習(NPV・WACC・CAPM)に加えてBlack-Scholes(Option)モデル・転換社債の使い方等も含まれます。理論に関しては授業で復習して、それをケース(M&A・社債の発行)に当てはめて実生活でどう応用していくのか。そして、最後のProjectでは一つの産業(医薬・非鉄金属・エネルギー・食品)等の各会社のFinanceを比較し、その会社の株が買いか否かを分析するという大変密度の濃い授業です。Financeの応用を学びたい人、そしてもう一回復習したい人、両方に打ってつけの良い授業でした。
【選択】Financial Risk Management
一般事業会社での財務リスクの基本的なヘッジの考え方についての授業。金融機関では一般的なリスク指標であるVaR(Value at Risk)を事業会社にも適用し、通貨リスク、原油リスク、信用リスク、流動性リスクなどのリスクに対して、どのようなヘッジ戦略を立てるか授業。ヘッジ戦略構築過程で金融市場についても詳しくなれます。教授は、概念的にはRadyのファイナンスの授業の中でも最も難しいと言っていましたが、リスクについて幅広く学べてとても有意義な授業です。金融機関や事業会社のコーポレートファイナンス担当を目指す方に向いている授業です。
【他部聴講】 デリバティブ等
MSF (Master of Finance) 、IRPSや経済学部Ph. Dの各種ファイナンスの授業も12単位まで事前申請することで卒業単位として認定されます。デリバティブやクオンツ系の科目に興味がある方はMSFや経済学部のPh. Dもご参考にしてください。ご参考までにですが、UCSDの経済学部は計量経済学、特にTime Series Analysisに関しては世界トップクラスです。
独自研究
【選択】Individual Directed Study
教授(助教授)の指導のもと、企業等へのコンサルティング活動を行うこと等を目的に、教授によるレクチャー(ミーティング)を重ねる科目です。教授が「このようなコンサルティングのニーズがあるので、誰かやってみないか?」と問いかける場合と、学生の方から「教授のもとでこういった分野の学習がしたいのだが」と投げかける場合があります。病院の待ち時間を効率化するプロジェクトや、投資会社に投資判断インデックスを提案するプロジェクト等、現実社会への繋がりが強いケースが大半です。教授1人につき、生徒2~4人程度という密な関係を築くことができます(Radyスクールの小規模な学生数の結果として、一つの分野に強い興味を示す生徒の数がそのくらいに丁度収まるといった事情があります)。一回あたり4単位のカウントとなることが大半で、その場合3回までがelectiveとして算入されます。
応用実践
ビジネス化総合演習
【必修】Lab to Market
Radyスクールのシグニチャー・プログラムであることは間違いありません。卒業前の約1年を費やし、グループで起業プランを作成します。この作業には戦略論、事業開発ノウハウ、マーケティング、ファイナンス、組織論、オペレーションなどあらゆる知識を総動員する必要があり、まさにMBAスクールにおける集大成とも言えるプログラムです。
具体的には、起業プラン作成に重宝する様々なフレームワークを学びます。一例として、新しいアイデアを創出するための方法論、製品・サービスなどといった多面的な軸で初期アイデアの可能性を広げるための思考フレームワーク、将来の様々な不確実性を考慮に入れ堅牢なビジネスプランを作り上げるための「シナリオプランニング」、作成したビジネスプランの十分性をチェックするツールなどなど。こうしたツール群を、ケーススタディをベースとした演習を通して、実際にどのように実ビジネスに適用していくのかを学んでいきます。
これらの思考ツール群に加え、それまでに学習した様々なビジネススキルをフル活用して、新しいビジネスアイデアを創出して、それを商用化するためのビジネスプランの検討をグループで進めていきます。サンディエゴという地域柄、あるいは、ご時世柄、新しいビジネスアイデアは、サイエンス系、あるいは、テクノロジー系がトピックとなるケースが多いですが、アイデア内容に制約はありません。個々人が熱意をもって追及したいテーマであれば、どんなテーマでも構いません。
Lab to Marketで体験するような計画策定作業を完遂することで、文字通り起業家的発想や経営的視点を実体験を伴って培うことができます。こうした経験は、自らベンチャー企業を立ち上げたい人には直接役立つものですし(このクラスからビジネスコンペでトップを飾り、スタートアップファンドを得て起業した学生もいます)、起業しなくとも、一般企業の社内でプロジェクトを遂行する人にも大きな経験効果をもたらすことでしょう。どんなに小さなプロジェクトであっても、そこには、戦略、マーケティング、予算、組織、オペレーションなどの様々な要素を加味したプロジェクト計画が常に必要です。これら諸要素を俯瞰的に理解し、リスクをマネージしながら、イノベーションを追求していく、そうしたリーダーシップこそMBAホルダーの価値であり、Lab to Market はそうしたスキルを包括的に学ぶことのできる卓抜したプログラムです。(こちらもご覧ください)
【選択】Biotech Industry, Structure, & Strategy
サンディエゴの中心産業であるバイオテクノロジー業界に特化したコースです。製薬会社、医療機器メーカーのケース・スタディを通じて、バイオテクノロジー業界における企業戦略、ビジネスモデル、IP、ファイナンス、セールス&マーケティングを幅広く学びます。授業で使用されるケース・スタディは大手企業のものが多いですが、サンディエゴの地元バイオテックもあります。このような場合、ケースの当事者である企業の方がゲストスピーカーとして教室に来てくれることが多く、この授業でもバイスプレジデント2名がライセンシング交渉の舞台裏に関する苦労話などを披露してくれました。特に、医薬品の開発から上市、そしてジェネリック医薬品の参入までの製品ライフサイクルをファイナンス面から理解するための演習はとてもチャレンジングなもので、バイオテクノロジーに馴染みの無い方にとっては業界固有のメカニズムを学ぶと同時にファイナンスの復習もできます。また、フルタイムMBAとフレックスMBAが一緒に受講する授業であり、フルタイムMBAにとっては、フレックスMBAの勤務先企業(ほとんどがバイオテック)とネットワークを作る絶好の機会でもあります。
【選択】Drug Discovery, Development & Commercialization
薬学部(Skaggs School of Pharmacy)、医学部(UCSD School of Medicine)、ビジネススクール(Rady)の3スクール共同講座です。薬学部の教授によるモデレーションのもと、毎回2~3名のゲストスピーカーから医薬品開発の各工程と課題を学びます。学期末には各スクールから1~2名ずつで構成されるCross industryチームでLife Cycle Strategic Plan Projectに取り組みます。このプロジェクトでは教授から指定された実在の医薬品を題材に、薬学的知見を踏まえた売上拡大プランの策定に取り組みます。薬学部、医学部からの学生が専門知見を提供してくれる代わりに、ビジネススクールの学生には経営分析スキルとマーケティング視点が期待されます。
私にとって新鮮だったのは、チームメートにビジネス用語がまったく通じないことでした。少し大袈裟に言うと、ビジネススクールのクラスメートには3分で説明できることでも薬学部の学生には30分かけて説明していました。日頃、深く考えることなく使用している経営コンセプトやマーケティングプラン策定手順を、彼女達が納得できるまで分かりやすく咀嚼して説明することが求められます。こうした専門知識を相互補完するコミュニケーションは貴重な学習プロセスで、自分に足りない知識を補完する以上に、頭の中に乱雑に詰め込まれた知識・ツールを整理する良い機会となりました。
【選択】China Finance Markets
2011年春に中国Tripを開催したこともあり、中国市場への理解(特に金融面)を深めるために設置された科目です。内容はマクロ経済的な(中国元とUSドルの関係)ものからミクロ経済、法律、VCに至るまで広範囲にわたります。中国は13億人の人口を持ち、今後の市場成長性も有望とされていますが、欧米や日本人から見ると、独特の金融システム(銀行は企業の株を保有できない)・コーポレートガバナンスシステム(政府系関係者が企業経営に関与することが多くある)等、やや違った側面があり、非常に興味深い内容であり、中国市場への理解を深める絶好の良い機会となりました。
※2012年以降、開講されるかは未定です。
※IRPSにもDoing Business In Chinaという、これと似た科目が開講されているので、教務課の了承を得れば、そちらを受講することも可能です。